千葉大学文学部からのお知らせ

学長選考・監察会議からの公表についての意見

2024/03/28 (木)

千葉大学大学院人文科学研究院教授会

今般の学長選考をめぐる問題について、3月14日(木)、本学ホームページに「第6回学長選考・監察会議(議事録)」(以下、「議事録」と略す)および同会議議長名義の「学長となるべき者の選考理由等について」と題する文書(以下、「選考理由等」と略す)が公表されました。

本件に関しては、これまで人文科学研究院に加え教育学部・理学研究院・国際学術研究院・工学研究院・園芸学研究院・社会科学研究院の7部局の教授会ないし執行部、および千葉大学ユニオンや学生・卒業生有志といった団体から、公開もしくは非公開の形で質問書や要望書が提出されていましたが、今回のように詳細な議事録や選考理由が公開されることは従来の千葉大学の学長選考においてなかったことであり、関係各位のご尽力に敬意を表します。
しかし遺憾ながら、その内容は、我々の提起した根本的な疑問に答えるものではありません。すなわち、今般の学長選考が千葉大学学長選考規程に則って適切に実施されたのかどうか、具体的には、その第16条に明記されるように「学内意向聴取の結果を参考にして」行われたのかどうか、行われたとすればどのように「参考にし」たのか、という点について、十分な説明を提供するものではありません。したがって、今回の公表内容をもって我々の質問書への回答と看做すことはできません。
上掲「選考理由等」によれば「今後新たな文書等が提出された場合も、これ以上の説明は行いません」とのことですが、「求められる学長像(国立大学法人千葉大学学長選考基準)」には「学長選考・監察会議は、自らの責任の重大性を認識し」と謳われており、この責任には説明責任も含みます。一方的に議論の打ち切りを宣告することは、自ら責任を放棄することにほかなりません。
以下、今回の公表内容に関しいくつかの具体的な疑問点を指摘します。

1、議事録と「選考理由等」との整合性に関する問題
今回の公表に先立ち、2月7日(水)に議長名により公表された「学長となるべき者の選考について」には「求められる学長像に基づき学長としての適性を審査した」とあり、今回公表された議事録にも冒頭に「「求められる学長像」に基づき選考すべきである」との発言が記録されていますが、それ以下の議事録の内容を見る限り、発言の多くは学内意向聴取で最多の票を得た候補者への批判に集中しており、「選考理由等」に述べられるような、学長となるべき者として選考された候補者を高く評価する意見はほとんど見られません。今回公表された「選考理由等」が、学長選考・監察会議における十分な議論を経て合意されたものであるのかどうか、甚だ疑問とせざるを得ません。

2、議事録における選考基準に関する問題
今回公表された議事録において、学内意向聴取の結果ならびに学内意向聴取で最多の票を得た候補者に関して発せられた意見の多くは、必ずしも「国立大学法人千葉大学学長選考規程」や「求められる学長像」に沿っておらず、それらを恣意的に解釈したものにすぎません。

たとえば、議事録には学内意向聴取の結果に関して「過半数の得票者はいない」といった意見が示されていますが、上述のとおり学長選考規程第16条には「学内意向聴取の結果を参考にして、学長となるべき者1名を選考する」とあり、過半数の得票者がいないからといって結果を無視してよいわけではありません。
また、「これまで中山学長が進めてこられた諸施策(中略)を継続・発展させられる者を選考すべきである」、「意向投票第一位の候補は、中国語翻訳本はあるが英文論文がない。選考基準の「優れた学識」の見地から懸念される」等の意見も見られますが、「求められる学長像」には前任者との継続性や外国語業績の内訳についての言及はありません。とりわけ後者については、多言語多文化の尊重という現代世界の要請に反するものであり、不適切であると考えます。
さらに、過去の他大学での事例をもとに「学内意向聴取は、自分や所属学部にとって有用で否定的でない人物に票を入る(ママ)傾向がある」との意見も示されていますが、根拠のない無責任な発言であると言わざるを得ません。

3、「選考理由等」の偏向性に関する問題
今回公表された「選考理由等」では、「求められる学長像」に即して「1.学長の資質」「2.教育」「3.研究」「4.社会貢献」「5.大学運営」の5項目につき、学長となるべき者を選考した理由が述べられていますが、そのうち「3.研究」を除く4項目は、いずれも専ら千葉大学医学部附属病院長としての職務に由来する評価であり、一般的な選考基準とはなし得ないものです。「国立大学法人千葉大学学長の選考手続に関する学長選考・監察会議申合せ」第1条には「学長選考・監察会議委員は、その職務を行うにあたっては、常に中立・公正の立場を保持しなければならない」とありますが、そもそも異なる分野に適用できない選考基準に依拠することは、選考の中立・公正性に関する信用を損ねるものです。

4、学長選考・監察会議の運営に関する問題
今回公表された「選考理由等」の末尾には「学長選考に関する現行制度の変更要望などについては(中略)次年度から学長選考・監察会議において、検討を行っていく予定です」とありますが、これまでの経緯からは、学長選考・監察会議の運営自体が、透明性や民主的手続きの重視のもとに適切に行われていないのではないかという懸念が生じます。したがって、大学執行部には今般の学長選考における問題点の検証に加え、学長選考・監察会議の運営が学長選考規程を誠実に履行するものとなっていたかどうかの検証が求められます。併せて、他部局からの要望書にも指摘されていたように、学長選考・監察会議の委員構成に関し、ダイバーシティおよび中立・公正性を担保できるような制度設計の工夫が必要と考えます。今後、学長選考・監察会議が教職員との信頼関係のもとでその職務を遂行していくためにも、早急な対策を切に望みます。

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